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上智大学・ベネッセ英語教育シンポジウムに参加して(その1)


先日上智大学で行われたシンポジウムに参加をしてきました。

副題「話すこと」の指導と評価をどう始めるか?

12月の日曜日10時から始まり17時20分に終了という長丁場でしたが、もっともっと聞きたいことあったのにという充実した内容でした。

自分が参加をした理由は、松下信之先生の発表が聞きたいからという点と、根岸先生、重松先生、工藤先生、津久井先生という豪華登壇者たちの話を楽しみにしてでした。

本日はまず第一部から得たことや感じたことを書きたいと思います。



第一部

中高の英語指導の実態と教員の意識「中高の英語指導に関する調査2015」(ベネッセ教育総合研究所)



英語を学習していく際には英語を学ぶモチベーションが大切なことは誰もが納得すると思います。

それでは実際どれくらいの人が英語を学ぶ必要性を感じたり、将来自分が英語を使うイメージが持てているのでしょうか。


英語が将来必要だと思うか?の問いに、小中高生も保護者も中高の教員ともに必要だと思う割合はおおよそ9割でした。

それに対して自分が、あるいは自分の子が、あるいは自分の生徒が英語を使うイメージはどうかというと。

小中高生の4割強が英語を使うことはほとんどないと答えています。

保護者は25%、中学校の教員も25.4%、そして高校の教員は37.3%がほとんど使うことはないだろうと答えています。

これは全国で行われた調査であるため、東京などの都市圏で生活する人たちと地方で生活する人たちでは大きく実感が異なるだろうなと思います。

2020年のオリンピックに向けて、たくさんの外国人が日本を訪れることなどを紹介しながら、英語を使用するイメージをもっと持たせられるような指導の工夫を考えてみたいですね。




続けて教員の自己研鑽の状況ですが、驚いたのが5割弱の先生が英語教育関連の学会や研究会に参加するを選んでいることです。

自分自身幅広く参加させていただいているつもりですが、お見掛けする方々はいつも同じ先生方ばかりです。

前任校の先生にお会いしたことは一度もありません。

また受けたい研修に関しては、話す力や書く力、技能統合などの研修を上げる先生が多かったようです。

きちんと現場の先生方に役立つような研修や研究会作りと、そのような先生方が来やすくなるような工夫を今後も考えなければいけません。

このデータが本当の現実を表しているのであれば、もっともっと英語教育について広げるチャンスはあるのだろうなと心強い気持ちになりました。

また指導に影響を与えているものとして、研究授業や公開授業などで見た授業や、日々の生徒の反応や成長など、研修先と現場の目の前の生徒を上げる先生が多かったようです。

それであれば、研究会等で生徒が生き生きと学んでいる姿をお見せすることが一つの授業を変えるきっかけになり得るなと思いました。

また、それを実践しやすくなる形で提示し、実際に目の前の生徒の様子が変わるのを目の前で見たらどんどん授業変革が変わるかもしれないなと思いました。





指導方法に関しては音読と発音練習がトップ。

その次に文法の説明やQAによる教科書本文の内容理解や本文の和訳、本文のリスニングや文法の練習問題と続きます。

まぁいわゆる訳読式の授業でよく見られる光景が目に浮かぶ回答ですね。

しかし同時に、中学校の79%では生徒同士の英語での会話(高校では46.4%)、中学校の76.4%と高校の59.8%で行われている英語に折る教科書本文の口頭導入(オーラルイントロダクション、など少しずつ先生方の中でも英語を使用した授業が広がりつつある現状を見ることができてうれしかったです。

ディベートやディスカッションは未だ10%未満という厳しい状況ですが、少しずつ少しずつ現場も変わってきてるのかもしれませんね。

英語教育観や評価の仕方などを先に考えないと中々現場の指導方法も変わらないだろうなと思うこともよくあります。


実際4技能のバランスを考慮して指導することがとても重要だと思う先生の割合は6割前後いますが、十分実行している先生方は1割程度のようです。

生徒が自分の考えを英語で表現する機会を作ることに対してもとても重要だと思う先生が中学校では82.3%高校では66.8%いながら、十分に実行している先生は中学校では19.2%高校では9.9%ということでした。

重要だとまずもっともっと思ってもらう必要性がまずあると思います。

しかし同時に思っているだけでなく実行できるようなサポート体制なども重要なのでしょう。

先生方の英語使用の割合や、どのような場面で英語を使用しているかのデータなどを見ても、中々英語で授業を行う意味がきちんと理解されていないのかなとデータを見ていて思いました。

しかし英語で授業をすることによるメリットと問題点と感じられていることが今回のデータから再確認できました。

いかにして現場の先生にメリットを強調して伝えられ、問題点に対する解決策を伝えられるかはこれから考えなければいけないことだなと思いました。



そして最後に先生方の悩みを見ると、現状の学校現場の課題を見ることができます。

授業準備に十分な時間がかけられない、教科指導以外の公務分掌の仕事が負担である、英語教師に求められることが多くて負担など、ちょっと不安になってしまう要素に7割近い先生方そう思っていると答えている現状。

また「英語で授業を行う」の方法が分からないは3割程度、書くことや話すことの評価方法が分からないが3~4割程度という、悩みにさえきっとなっていないのだろうなという現状。

十分な研修を受けられないを選んだ先生は36%ほどいますので、研修の機会を設定すれば少しずつ変わる可能性がある先生がこれだけいるのだという期待と、これを悩みにもあげない(研修する気がない)という大勢の先生と実際に研修にすでに参加し満足している先生方。

過去の現場などを思い出すと、なかなか困難な状況が次々と待ち受けているなと思います。

しかし少しでもいいからじわじわと変えていくしかないのだと思います。

これから10年程度で半分近い先生方が退職をします。

残る世代の先生方に対して、一つの指導方法を示すことで何か少しでも変化が起きれば十分なのでしょう。




その後会場内の先生方と自由討議を行う時間をいただきました。

講師からのアドバイスもあり、一緒に連れ立ってきた先生とではなく、あえて別の先生と話をするようにしました。

そこから感じたのは、やはり中学校ではどんどん色々と実現ができそうな環境が揃っているという点です。

生徒の反応も教科書の量も、outputを授業に取り入れやすい状況があると思われました。

その反面高校の現場の厳しさも再確認することができました。

同僚問題や入試や教科書の構成など、まだまだ環境さえ整っていないなと思いました。

また気が付いて会場を見回すと、本当に見覚えのある先生が多い事実と、また初対面の先生でも共通の知り合いがいたりして世間は狭いなと思わされました。





最後に講師の先生から4分ずつの短いコメントがありましたが、そのうち一部を紹介したいと思います。。

まず工藤先生から日常の生徒の家庭学習についての発表がありました。

生徒が家庭で何を行っているか、やはり単語調べや本文を写して和訳が圧倒的。

しかしその中でも、自分の意見や考えを書いたり話したりしているを選んでいる生徒と、Can-doの自己評価における上位群と下位群、には有意な差がみられたようでした。

しかし同様の差が、和訳や問題演習、映画や歌やテレビ番組で英語を学習しているでも見られて。

つまり単純な英語の学習量の差の部分もあるのかもしれないなと思いました。

工藤先生からは多様な活動を行うことの大切さが紹介されました。

英語の学習へのモチベーションをあげ、英語を好きにさせ、そして無駄な学習をなくし正しい学習方法へと生徒が導かれるといいですね。



その後重松先生からは、最近の学生の内向き志向というか、海外へと進みたがらない傾向に対しての思いが語られました。

先生の学校では集会等で先生から様々な外国の話をし続けた結果、生徒たちの海外へ向かおうという姿勢が高まったそうです。

それを実感するのが指定校推薦などに臨むための練習で行う校長との模擬面接の場面での発言からだそうです。

是非5年後までにその子が本当に留学などをしたか、英語学習に対する姿勢はどうだったのか調査を続けて見てほしいなとついつい思ってしまいました。

面接官を行いその後校内で3年間様子を見た経験から言うと、正直推薦入試での発言にはあまり本音や本心は語られないことが多いと思います。

期待はしたいですが、正直そんな簡単なものではないと思ってしまいました。




最後に根岸先生から、ついつい研究授業などある一時間の授業などで問題を考えがちであるが、実際はそれは長い経験により積み重ねられたものだ。

少しずつ点と点が繋がっているような気がする。

そして英語使用の少ない先生は自己研鑽の機会が少ないというデータが今回の調査から出てきた。

また若手の先生ほど実は授業内での英語使用の場面は少ないとのことでした。









最後に調査の意味、存在自体を少し崩してしまうかもしれない自分の勘を紹介したいと思います。



なぜ若い先生ほど授業内での英語使用の場面は少ないのか。

またなぜその英語使用の場面が少ない若手の先生が自己研鑽を行うことが少なかったのか。

それは前任校で同様の調査があった際の先生方の答え方から見えてきた勘です。

たまたまその年度では教科主任をやらされていたため教科内での回答の集計を行う機会がありました。

その集計を行いながら、首をかしげることが度々ありました。



若い先生ほどこのような調査に対して正直に答えます。また男性の先生は基本的に正直に書きます。

逆に言えば、年配の40~50代の特に女性の先生の解答は、自分が現場で見る姿からかけ離れた姿のケースが多かったです。

学習指導要領で「英語で英語の授業を行うことを基本とする」と定められた以上、いくら匿名でも若干事実と異なる回答をする先生がよく見られました。

全ての授業をすべて見ているわけではないのですが、自分が見たり聞こえてきたりした授業の風景や、生徒に聞き取った状況と異なる回答が何名かいらっしゃいました。

自己研鑽関連についても、校内に案内される多彩な研修などでも、校内一名という制限があってもすべて自分が参加をすることができました。

自分の知らない場所でみなさん研究会や研修会に参加をしたり、英字新聞を裏でこっそり読んだりされていたのかもしれませんが、全く目の前の先生方とは異なるような前向きに自己研鑽に取り組んでいる素晴らしい先生の姿のような回答をされる先生が何名かいらっしゃいました。

しかしこれはあくまで前任校での数少ないデータによって生じた自分の勘でしかありません。

さらに言うならこのブログはすべてフィクションなので、現実には存在しない先生のお話です。





午前の80分だけでも、たくさんの気づきや発見、思考のチャンスのある報告でした。

やはりこのような場面に出席して色々と学ぶことは本当に楽しいものだと思いました。

若手の先生方も部活動などなかなか日程調整が難しいこともあると思いますが、うまく分担を行って色々と学ぶ機会を作るようにしてください。

自分もこの会に参加するために、もう一人の顧問の先生と日程を入れ替えて調整を行いました。

みんなで日本の英語教育を変えていきましょう。
by shun-sensei | 2015-12-26 21:00 | 英語教育