英語力を伸ばしている学校の特徴ARCLE上智大学ベネッセ英語教育シンポジウムを聞いて

ARCLE上智大学・ベネッセ英語教育シンポジウム2016の発表を聞いて、色々と考えることがありましたので報告します。


まず当日は発表予定の東京外国語大学の根岸雅史先生がインフルでダウンとのことで、協働研究者のベネッセ教育総合研究所の加藤由美子さんが発表を行いました。

昨年度もお話を聞く機会がありましたが、加藤由美子さんのお話はとても上手で、聞きやすいですね。

さて、今回の研究の一つのきっかけが根岸先生が抱いた授業評価の難しさだそうです。

1回の研究授業を見ただけでその人の教授法、指導技術がどれだけ分かるのかという問題、そしてその研究授業に対する評価がどれだけ実証的なのか、さらに1回の授業で学校としての英語教育の成否を判断していいものかという3点です。

この3点については本当に納得させられるものです。

例えば私も数週間前にある尊敬する先生の素晴らしい授業実践の映像を見に行きました。

自分が現在の授業スタイルを作り上げる参考となった素晴らしい授業で、それだけの評価を様々な先生からされている授業です。

しかしその授業に対してかなり辛口のコメントをしているブログを読みました。

このブログの著者は、発音指導に対してかなりのこだわりと、生徒の間違いを必ず直すことに対してのかなりの強い想いをお持ちです(書籍も多数ある大御所の先生の1人です)。

私と当日一緒に見に行った同僚からすると、自分たちの目指す英語授業の一つの完成形のようなものの授業に対してあのような捉え方をする人もいるのかと初めは驚きました。

しかし、その人の書籍は今までも読んでいたので、ある意味納得するとともに、今回のこの評価が実証的かどうかという問題ととても関連しているなと思いました。

同時に自分自身が人の授業実践に対して偏り過ぎた見方をし過ぎないように、との反省にもなりました。



さて、そのような問いかけから今回の研究メンバーは学校として英語力がどれくらい高められるのか、そしてそのような学校にはどのような特徴があるかを調査されたそうです。

その方法として、GTEC for STUDENTSのトータルスコアの伸びが大きい学校の中で、授業時数や教室規模が標準的な公立高校を選び、データ分析と実際の状況の視察やインタビューという方法で調査を行いました。

細かい実際のデータ等はARCLEのホームページに詳しいので見ていただきたいのですが、自分自身が思ったことを中心にここはまとめたいと思います。


まず、GTEC for STUDENTSを生徒に取り組ませている先生なら誰もが経験すると思うのがライティングのスコアの不思議さです。

今回も別のセクションで2名の100点(170点満点)の答案を見ましたが、やはりその2枚の答案は同じ点数には見えません。

どんなに文法的なエラーが多くても、構成がきちんとしていて量があるだけで実は100点くらい取れてしまうのがこの試験です。

その中で、ライティングの伸びがなかったと紹介されていた大分上野丘高校ですが、高1の平均スコアがすでに130点弱ありました。

正直170点満点のGTEC for STUDENTSのライティングで平均130点から伸びすのは非常に困難を極めます。

それに対して大幅にライティングを伸ばしたと紹介されていたのが釧路江南高校ですが、これは高1時点で88点だったものが109点くらいまで上がったのでしょうか(資料が白黒のため、誤りがあったらすぐに修正します)。

このように、伸びしろが大幅にある学校と、もはや天井がスタート時点からかなり近かった学校で比較する難しさを考えなければいけないなと思いました。

特に今回研究にあたった方々はおそらく実際に生徒を指導した上でのGTEC for STUDENTSの点数の推移を経験をされたことがないと思われます。

このような難しさも今後は考慮しなければいけませんね。

ちなみにその他の3校の高1から高3次でのライティングのスコアは110点→120点、104点→110点、114点→118点と、どの学校も同じようなところに落ち着いている点も注目が必要かと思います。


さて、その上で、どの5校も点数を大幅に伸びしている点では学べる面が多数あります。

例えばどの学校も教科としての取り組みを積極的に行っています。

授業パターンのモデル化を行ったり指導方法やワークシートを共有されています。

そして当然授業内で一文一文の和訳は行わず、生徒が授業中に忙しいような活動が豊富な授業を行っています。

スピーキングやライティングは年数回のイベントのように行うのではなく、きちんと日常的に書かせスピーキング活動を授業内に取り入れています。




一つ気になったのが、5校中3校が使用していたリスニング教材についてです。

自分が現在指導していて強く思うのが、授業をきちんと英語で行っているとこのようなリスニング教材は不要です。

授業内での教員からのインプットが日常的に十分に行われ、同時に音読でオーバーラッピングやシャドーイングを行った生徒は特別な対策をしなくてもかなりのリスニング力を身につけています。

5校中3校がリスニング教材を何らかの形で使用していたのが個人的には不思議に感じられました。



さて伸びとその他の要因に関してですが、ライティング以外に関しては、高1時点のスコアがいくつであれ、その後も伸びが期待できます。

また私立や英語かなどを設置している学校では週の授業時間数が3年間で25時間以上の学校もあるのだが、そのような学校であれ3年間の合計が17時間~19時間の公立高校であれ、伸びる学校もいれば伸びがイマイチな学校もあるようです。

担当者からは、こちらからはお願いしにくいのでできればこの伸びていな学校に調査を依頼したいのだがどこか名乗りを上げていただけないか、とのことでした。

確かにお願いはしにくいでしょうね。



さて最後に英語力を伸ばしている学校の共通要素として以下の4つに分けてまとめていらっしゃいました。
A英語授業の「質」
B学校・英語科としての取り組み
C生徒が英語学習に向かう土台作り
D地域や学校の環境を踏まえた取り組み

ついつい我々はAに集中しがちだがB~Dの要素も当然大切でしょう。


さて、A~Dどの具体的な中身もとても納得がいくものでしたので、是非ARCLEのHPをご覧いただきたいのですが、自分が注目した点を述べると、

まずA~Dが本校は完全に整っているという点。

先輩の先生方が築いてくださったものとそれに上乗せして我々の世代が作り上げているもの。

Aの授業の「質」に関しては当てはまらないものはなく、当然本校もこの日紹介された学校以上の伸びを示しています。


またBに関して、変革を起こしていくためには必ず核となる中心の先生がいて、それを周りがサポートする体制が整っているそうです。

それがSELHiなど外圧的な物であるケースも多いようですが、そうでなくともやる気のある30~40代くらいの先生をサポートするベテランや管理職がいることで達成可能なようです。

そしてマメな話し合いの機会を持とうという協力的な姿勢は不可欠であり、必要性に追われた時しか科会を開かないようでは厳しいのかもしれません。

またCDのように、英語科のみならず学年担任団や学校全体からのサポートも不可欠なのでしょう。


自分の行う英語の授業を受けることで生徒がどのように成長するのか。

それが英語力を身につける、だけでいいのだろうか?

教科書を学んでそれがゴールで十分なのだろうか?

そんな視点でもう一度自分自身の授業を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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by shun-sensei | 2017-01-07 14:03 | 英語教育 | Trackback | Comments(0)