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文科省が行う通称「ねずみ講研修」英語教育推進リーダーが行う研修ースピーキング活動編ー

タイトルのネーミングはある研修会である先生がおっしゃっていた言い方です。

なぜそう呼ばれるかというと、各自治体からまずリーダーに選ばれた先生が中央研修という研修を受けます。

そのリーダーは各自治体に戻り、自分が受けた研修と同じ研修を自治体で一年間かけて行います。

その後、そのリーダーが行った研修を受けた人がまた別の先生方向けに研修を行い、、、とまるでねずみ講のように研修内容を伝え広げる方式を取っているためそのような呼び方をされたのだと思われます。

2020年までの数年間で何とか全教員に受講させたいという結果ありきの計画から始まったいかにも役人が考えそうな研修ですね。

しかし一番の問題点はその研修の中身です。

中身が充実した研修であれば、どんな方法でもなるべく多くの先生方に受講してほしいです。



しかし残念ながら今回も文科省の行う事業。

この研修の中身はすべてブリティッシュカウンシルという、英国の公的な文化交流機関(英会話教室やIELTSなどを行う)に丸投げしているという点が残念でなりません。

さて、その研修の中身を知ることができたので今回はリポートして、よりよい研修になるための提案を行いたいと思います。



研修は技能など別に複数日を用いて様々な授業案の紹介と分析を中心に行われました。

それぞれの研修の初めにはその研修の大まかな内容、狙いなどが紹介された上で行われます。

まずはスピーキングの研修について。

さてスピーキングの一時間目はあくまで高校1年生レベルの英会話活動。

席から立って、~をしたことのある人を探すためにどんどん質問をする、という活動。

いわゆるコミュニカティブな授業というとこのような授業がイメージされるのでしょうか。

かつてのオーラルコミュニケーションの教科書などで紹介されていそうな活動です。

この活動自体は非常にレベルの低い研修で行われそうな活動だったのですが、その後に行われたピラミッドディスカッションがなかなか興味深かったです。

今回のお題はWhat is the most difficult skill for our students in English?で、まずペアで話し合い、それを別のペアと共有し四人で話し合い、その後また別の4人グループと話し合い8人のグループで話し合い、そこで代表者を決めて発表するというものでした。

活動としてペアから4人、8人と広げる方法はいきなり4人などのグループで話し合わせるよりも一人一人が意見を持ち、話をせざるを得ない雰囲気を作れて面白いなと思いました。



活動としては面白かったのですが、肝心の議論の内容が英語で行わなければいけなかったため、せっかくの機会なのに議論が深まらないなと思いました。

とてももったいないですね、せっかく色々と議論を深めるチャンスなのに。


第二部では良いスピーキング活動の4つの要素が紹介されました。

一つ目はインフォメーションギャップ。

これはもう間違いないですね。

二つ目はタスク型であること。

スピーキングを行う目的がきちんとなければ生徒は話しません。

ただ「話してごらん」ではなく、何かを達成するには話をせざるを得ないような状態にすることが大切です。

三つめはモチベーション。

生徒が興味関心をもてるようなテーマか、生徒が楽しんで行うことができるテーマか。

そして四つ目がコントロールされたものか自由なものか。

どの程度教員が生徒の発話をコントロールするかは生徒の能力にもよるでしょう。

英語が苦手な生徒であればある程なるべう多くの指示を与え、コントロールされた活動が重要になります。

逆に英語力がついてきてからは、ある程度の自由度を与えることでより多くの思考と発話が行われるでしょう。



この4つの要素は我々がスピーキング活動を考える際に必ず考え考慮しなければならない要素でしょう。

それをまとめる良い機会になったと思います。




そして続いて、スピーキングにおいて正確性を重視するか、流暢さを重視するかの視点が与えられました。

それぞれ正確性を重視した活動と流暢さを重視した活動が紹介されました。

例えば正確性を重視した活動では、かなり発話はコントロールされ、教員が求めることを言えるかどうかが焦点になります。

例えば疑問文がきちんと言えるかを鍛えたければ、生徒に教員に次々と質問をして答えを見つけるような活動を行いながら、間違いを修正していくような活動が考えられるでしょう。


続けて流暢さを重視した活動として、ロールプレイを利用した活動を体験しました。

今回は担任の先生にプレゼントをコンビニで買うという設定で行います。

買う役の生徒は店員さん役の生徒に商品を紹介してもらう必要があります。

そのために、その担任の先生がどんな人なのかを店員さんに言わなければいけません。

店員さん役の生徒もその初回を受け、コンビニという制限の中で商品を紹介し、なぜその商品が良いかを説明しなければいけません。

そのロールプレイをペアで実施。


そしてその後会話文を元にスキットを作成して発表する活動は正確性重視か、流暢さを重視かという問題についてペアで話し合い。

また、クラスの中を深めるための研修案を考え発表できるというものが正確性重視か、流暢さを重視について同様に話し合い。

これらを経て、正確性と流暢さのバランスが大切なのだということを確認。



最後にスピーキング力を高める授業の流れを当てはめる活動を行いました。

まずインプットがあったあとに、初めの練習と初めのフィードバックを行います。

インプットとしては、例えばいくつかの活動で使える表現を繰り返し練習させるなどの方法が考えられます。

そして初めの練習は小さめのグループやペアなどの小規模な単位で行います。

また、その際机間巡視を行い、生徒の様子を細かく見て回ります。

いったん止めて、クラス全体に対してフィードバックを行います。

個人に指示を出すだけではなく、よくあるミスや、逆に参考にしてもらいたい良い例なども紹介しても良いかもしれません。

良くあるミスに対しては、正しい言い方を繰り返し言わせるなどの活動が考えられるでしょう。


続けて別のパートナーなどともう一度同じ活動を行わせます。

そして最後に改めてフィードバックを行うと良いでしょう。



さて、スピーキング活動というとどうしても人前に立ってスピーチのような方法が思いつく人もいると思います。

しかし実際の生活場面での会話のほとんどがプライベートで対面で行うものです。

この公型のスピーキングとプライベート型のスピーキンという視点ももつと良いだろう。




さて、スピーキングの指導という中々取り組みが行われていない分野について考えたりまとめたりする機会が得られ、とても有意義な研修となりました。

すべての研修が英語のみで行われたことに疑問を感じました。

肝心の議論を深めたい時や、考えをまとめる際に英語で日本人同士が行うことがとても足かせになっていました。

生徒役になり体験するときと教師として考えたり議論を行う時を区別せず英語で行うことが、はっきり言って非効率過ぎました。

何より講師の先生の英語力にも問題があり、なかなか講師の先生も苦しそうでした。

このように研修などを英語のみで行うのが好きな先生が一定数いらっしゃるようです。


今回もそのパターンなのか、単純にブリティッシュカウンシルが全てを企画して行っているからかは分かりません。

しかしせっかくの機会にとてももったいなさの残る研修のようでした。

多くの先生方がこのような研修を受けるのはとても心強いことです。

だから使用言語だけをもう一度きちんと考えて企画を考え直すとより良い研修になるのではないでしょうか。

by shun-sensei | 2017-02-18 13:53 | 英語教育